フライス加工 1刃送り(fz)計算ツール
フライス加工における1刃当たり送り量(fz)を、主軸回転速度・テーブル送り速度・刃数から計算するツールです。トロコイド軌跡のリアルタイムアニメーションで切削の仕組みを視覚的に確認できます。
主軸回転速度(n)・テーブル送り(vf)・刃数(z)から fz = vf/(z×n) を計算。被削材別目安値表とトロコイド軌跡アニメーション付き。
※ トロコイド軌跡の模式図(上面図)。ブラケットは切削線上のx方向間隔 = fzの定義。スケールは誇張しています。
使い方
- 「n 主軸回転速度」をスライダーまたは数値入力で設定します(200〜40,000 min⁻¹)。
- 「vf テーブル送り」をスライダーまたは数値入力で設定します(10〜1,000 mm/min)。
- 「z 刃数」ボタンでエンドミルの刃数を選択します(2〜8枚)。
- 右側の結果エリアに fz の計算結果がリアルタイムに表示されます。左側のトロコイド軌跡アニメーションで各刃の切削パスも確認できます。
1刃当たり送り量(fz)とは
1刃当たり送り量(fz)は、フライス加工においてエンドミルが1回転する間に、1枚の刃が送り方向に進む距離を表す指標です。単位は mm/tooth(mm/t.)で表記します。
fzは加工面の仕上がり品質、工具寿命、切りくず排出性に直結するパラメータです。fzが大きいほど1刃あたりの切りくず厚さが増して加工能率は上がりますが、刃先への負荷も大きくなります。逆にfzが小さすぎると、切削ではなく摩擦(こすり)が主体になり、かえって刃先温度が上昇して摩耗を早める原因になります。
NC加工プログラムではテーブル送り速度 vf(mm/min)で指令するため、fzの値を直接入力する場面はありません。しかし加工条件を設計する段階では、fzを基準に vf = fz × z × n で送り速度を逆算する方法がよく使われています。
計算式と各変数の意味
fzはテーブル送り速度(vf)を刃数(z)と主軸回転速度(n)の積で割ることで求めます。
各変数の意味は以下のとおりです。
| 変数 | 単位 | 意味 |
|---|---|---|
| fz | mm/t. | 1刃当たり送り量 ── 1枚の刃が1回転で送り方向に進む距離 |
| vf | mm/min | テーブル送り速度 ── ワークが1分間に送り方向に移動する距離 |
| z | — | 刃数 ── エンドミルの切れ刃の枚数 |
| n | min⁻¹ | 主軸回転速度 ── エンドミルが1分間に回転する回数 |
この式を変形すると vf = fz × z × n となり、目標のfzから必要なテーブル送り速度を逆算できます。加工条件表のfz推奨値と工具カタログの推奨回転速度を組み合わせて、適切な送り速度を設定するのが実務上の手順です。
被削材別 fz の目安値
以下は超硬エンドミル(φ10 程度)を使用した場合の一般的なfz目安値です。実際の値は切込み量、工具突き出し長、クーラント条件によって変動します。
| 被削材 | fz 目安 [mm/t.] |
|---|---|
| アルミ合金(A5052 等) | 0.05 – 0.20 |
| 炭素鋼(S45C 等) | 0.05 – 0.15 |
| ステンレス鋼(SUS304 等) | 0.03 – 0.10 |
| 鋳鉄(FC250 等) | 0.08 – 0.25 |
| チタン合金(Ti-6Al-4V 等) | 0.03 – 0.08 |
| 銅合金(C3604 等) | 0.05 – 0.15 |
※ 上記は超硬ソリッドエンドミル(φ10)での参考値です。工具径・コーティング・切込み条件によって大きく変わるため、必ず工具メーカーのカタログ推奨値を確認してください。
ハイスエンドミルの場合は超硬に比べてfzを20〜50%程度低く設定するのが目安です。また、刃長が長い場合や深い溝加工では工具のたわみを考慮してさらにfzを下げる場合があります。
実際の加工条件例
本ツールを用いた代表的な計算例を3パターン紹介します。いずれも超硬ソリッドエンドミル(φ10)での条件です。
| 加工内容 | 被削材 | 工具径 | z | vf [mm/min] | n [min⁻¹] | fz [mm/t.] |
|---|---|---|---|---|---|---|
| アルミ合金の側面加工 | A5052 | φ10 | 3 | 1,080 | 12,000 | 0.030 |
| 炭素鋼の溝加工(荒加工) | S45C | φ10 | 4 | 600 | 3,000 | 0.050 |
| ステンレス鋼の仕上げ加工 | SUS304 | φ10 | 4 | 320 | 2,000 | 0.040 |
アルミ合金は高回転・高送りでも安定した加工が可能です。ステンレス鋼は加工硬化しやすいため、回転速度と送りを抑えて確実に切りくずを排出する条件が求められます。
fz と仕上げ面粗さの関係
フライス加工の仕上げ面には、刃の送りピッチに起因する理論面粗さ(カスプハイト)が残ります。エンドミル底面のコーナー半径を R、1刃送りを fz とすると、理論面粗さ Rth は近似的に Rth ≈ fz² / (8R) で表されます。fz が2倍になれば Rth は4倍です。
仕上げ加工で Ra 0.8 μm 以下を狙う場合は fz を 0.02 mm/t. 以下に絞り、コーナーRの大きい工具を選ぶのが定石です。逆に荒加工では面粗さよりも除去体積を優先するため、fz をカタログ上限付近まで引き上げます。
工具寿命の観点では、fz が大きいほど刃先の機械的・熱的負荷が増し、逃げ面摩耗が進みやすくなります。ただし fz を下げすぎると切削ではなくこすりが主体になり、刃先温度がかえって上昇して摩耗が加速します。被削材と工具の組み合わせごとに「摩耗が最小になる fz の下限」が存在するため、カタログ推奨値の下限を割り込まないことも同じくらい大切です。
よくある質問
- fz(1刃当たり送り量)とは?
- エンドミルが1回転する間に、1枚の刃が送り方向に進む距離のことです。fz = vf ÷ (z × n) で計算します。
- fzが大きいとどうなる?
- 切りくずが厚くなり、加工能率は上がりますが工具への負荷が増え、工具寿命が短くなったり仕上げ面が粗くなる傾向があります。
- 適切なfzの値はどう決める?
- 被削材の種類、工具材質、カッタ径、切込み量によって異なります。工具メーカーのカタログに推奨値が掲載されているので、それを参考にしてください。
- このツールのアニメーションは何を表している?
- エンドミルの各刃先が描くトロコイド軌跡を上面図で表示しています。黄色のブラケットが隣接する刃の切削点間隔(=fz)を示しています。
- fzと切削速度(Vc)の関係は?
- 切削速度 Vc はカッタ外周の周速度で、Vc = π × D × n / 1000 で求めます。Vcから適正な回転速度 n を決め、n と目標fzからテーブル送り vf = fz × z × n を算出する流れが実務の標準手順です。
- エンドミルの刃数はどう選ぶ?
- 刃数が少ない(2〜3枚刃)と切りくずポケットが大きく排出性が良いため、アルミや深溝加工に向きます。刃数が多い(4〜6枚刃)と同じ送り速度でもfzが小さくなり、仕上げ面粗さが向上するため仕上げ加工や鋼材の加工に使われます。
- fzが小さすぎるとどうなる?
- 刃先が被削材を十分に削り取れず、切削ではなく摩擦(こすり)が主体になります。その結果、刃先温度が異常に上昇し、摩耗が加速したり構成刃先が発生して仕上げ面品質が低下する原因になります。
テーブル送り(vf)計算ツール
1刃当たり送り量(fz)が決まったら、テーブル送り速度 vf = fz × z × n を計算するツールで加工プログラムの F値を求められます。
主軸回転速度(n)計算ツール
切削速度と工具径から主軸回転速度を求めるツールです。fz計算の入力値 n を決定する際にご利用ください。